彼らもサイケでアフロに

アンクル『ホエア・ディド・ザ・ナイト・フォール』
2010年05月05日発売
ALBUM
僕は原則的に、サンプリング音楽はバンド音楽よりも高度なポップ・ミュージック形式だと思い込んでいる人間だ。それはサンプリング音楽がバンド音楽よりも後の時代にしか生まれ得なかったもので、何らかのカウンター意識を孕んで生まれたはずのもので、つまりWiiとファミコンとではどちらが優れているか、という比較と同じようなものだからだ。スペックや残された可能性が根本的に違う。バンド音楽がつまらない、という話ではない。あくまでもスペックと可能性についての話だ。最初のスーパーマリオは、きっと何十年経っても面白いのだから。

アンクルのこの新作は、ざっくり言えばサイケであり、アフロである。近年のインディー・バンドが鳴らすテイストを、もろに踏まえた作風なのである。バンド系アクトと親和性が高いジェームス・ラヴェルのアンテナ感度はさすがだが、アンクルに限らず、インディー・バンドの持つ新鮮なエネルギーを取り込もうとするサンプリング系アクトは最近多い。そして本作もまた素晴らしい作品なのだ。「形式の新しさ」では立場が逆だが、優れた作品でさえあればいいとする姿勢は見事。(小池宏和)