これはぼくたちの音

プライマル・スクリーム『マキシマム・ロックンロール:ザ・シングルズ -ジャパン・デラックス・エディション-』
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ALBUM
プライマル・スクリーム マキシマム・ロックンロール:ザ・シングルズ -ジャパン・デラックス・エディション-

プライマルは今年でデビュー35年目である。それを記念してのシングル・コンピレーション盤。90年に東京・渋谷クアトロでの初来日公演を観た時、こんな長寿バンドになるとはまったく想像もしなかった。ヘタクソなだけならまだいい。その人を舐めたようなやる気のない態度には心底腹が立ったものである。だがその後に出たアルバム『スクリーマデリカ』のかっこよさに、これまた心底やられてしまったぼくは、結局のところ彼らの魅力に参ってしまい、その後もアルバムごとに気ままな変遷を繰り返す彼らに振り回されながら、付き合い続けている。危うく不安定で壊れそうなロックは、それゆえひどく魅力的なのだ。

キラキラな甘酸っぱい青春ギター・ポップに始まり、ストゥージズばりのガレージ・ロックを経て、アシッド・ハウスの沼に足を踏み入れたのが、ひとつの転機になった。生真面目な学究的態度なぞクソ食らえとばかりに、己の快感原則と野生の勘のみを頼りに、南部サウンド、ダブ、ニュー・ウェイブ、エレクトロニカ、ノイズと、付け焼き刃だろうが一夜漬けだろうが、そのつどの旬の音のエッセンスを取り込み、かっこいいロックンロールに仕立ててしまう。その手腕は一貫して水際立っているが、こうしてまとめて聴くと、その楽曲の良さに加え、彼ららしい個性、というかポリシーは一貫している。それは「絶対にヤボにならない粋の美学」とでも言うべきものだ。

放埒すぎるドラッグ&ロックンロールなライフスタイルゆえ、ライブごとの出来不出来が激しく、毀誉褒貶が激しかったころを思えば最近の彼らは安定している分ちょっと落ち着きすぎという気がしないでもないが、60歳になっても70歳になっても丸くならず尖り続けてほしいと切に願う。 (小野島大)



詳細はSony Music Entertainmentの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

プライマル・スクリーム マキシマム・ロックンロール:ザ・シングルズ -ジャパン・デラックス・エディション- - 『rockin'on』2019年7月号『rockin'on』2019年7月号
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