TOMOOの新曲“Present”がどこまでもポップなのに聴いているとなんだか泣きそうになる理由


昨年9月にリリースされてからじわじわと……というよりますます勢いよく、たくさんの人の心に届き続けているTOMOOのアルバム『TWO MOON』。その『TWO MOON』以降初となる新曲“Present”がこれまた素晴らしい。

ライブで初披露された瞬間から、親しい友だちのようなフレンドリーさですっと耳に馴染んできたこの曲。『関ジャム 完全燃SHOW』の「マイベスト10」にランクインした“Super Ball”、“Grapefruit Moon”に続き編曲を担当した小西遼のアレンジは冴えまくっていて、4管ホーンにフルートまで加わった、裏拍が気持ちいいビッグバンド調のアレンジの中を、ウーリッツァーやローズのまろやかな響きとゴスペルクワイアがクリーミーに溶けていく極上のサウンドを届けている。

そんな“Present”で歌われるのは「プレゼントってひとりよがりなものじゃない?」「そもそも愛ってそういうものじゃない?」という私たちの日常にあるシンプルな問いだ。その問いは《マットもシャイニーも君にある/淡いもビビッドも君のもの/どんな人かなんてすぐ/言えやしない君だから/幸せなんだ》という人間の多面性の肯定を経由しながら、《的はずれがもし届くなら/君がそうキャッチしてくれたから》という愛の相補性の提示によって、鮮やかに解決される。

「人の魅力は色とりどりで、だからこそ素晴らしい」というのは、古今東西あらゆるポップスで歌われてきたテーマだけれど、それでもこの曲がこんなにも新鮮に胸を刺すのは、ちゃんと《ちょっと目を離した隙に/ナーバスな顔でほら/自分に向こうとする矢印だ》という心の暗がりが描かれているからだろう。

TOMOOの楽曲はいつも陰日向を行き来するけれど、その影にどろっとしたところがまったくなくて、聴いたあとに必ず温かい気持ちを与えてくれる。影があるからこそ、その光がより強く美しく輝いている。この“Present”では、それがサウンドを通して目いっぱいに表現されていて、どこまでもポップな曲なのに、聴いているとなんだか胸がいっぱいになって泣きそうになってしまう。それはきっと、多幸感に満ち溢れたこの曲が個々人の記憶の柔らかいところにアクセスして、目の前の日々がどんなに暗かろうが沈んでいようが、幸せだったときの気持ちを「今=(Present)」に呼び覚ましてくれるからだ。そんなことができる“Present”は究極のポップソングであり、まさにとびっきりの「プレゼント」だと思う。(畑雄介)


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